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4技能統合の英語授業で使える! アイデア・資料集

 第5回 学校行事を題材にした技能統合型活動 ~タスクを活用して~


1. はじめに

 高校編の第2回となる今回は、教科書本文指導という枠組みから離れた形で行う技能統合型活動について紹介する。

 年間の授業スケジュールの中で、他クラスとの進度調整、学期末、テスト返却後といった理由で、時間に余裕があるので教科書内容を進めなくてもよい、という時期はないだろうか。そのような時期に既習レッスンの復習や文法問題演習などを行うことも重要だが、様々な英語使用場面の提供という視点から、教科書本文指導という枠組みから離れて技能統合型活動を行うことも考えられる。今回は、このような場面で実施する技能統合型活動例として、特に「タスク」に注目したい。

2. タスクについて

 タスクという言葉は、英語教育において様々な場面で使用されている。Ellis(2003)は、タスクとは次の4つの特徴を持つ活動であると述べている。

1. 意味・内容の伝達が第一義である。
2. 学習者間に、情報・考えなどの何らかの「差」がある。
3. 学習者が自分で考えて、「言語」を使う。
4. 言語を使う明確な目的がある。

 また、Willis(1996)によると、タスクとは、コミュニケーション上の目的を達成するために学習者に目標言語を使わせる言語活動であり、タスクを用いた授業では、目標を達成するために、自然な形で技能統合が促進される。

3. 学校行事を活用したタスク

 タスクを英語授業内で実施するために有効だと考えられるのが、文化祭や修学旅行といった学校行事の活用である。普段はなかなか意欲的に学習に取り組まない生徒でも、学校行事の準備では非常に意欲的に取り組む、というのはよくある話ではないだろうか。学校行事の準備段階では、明確な共通目的達成のために、情報交換をしながら課題解決を目指す場面も多い。その作業の一部を英語で行うことができれば、効果的なタスクになり得る。

表

 著者がこれまでに行った学校行事を活用したタスクの例については、上の表をご覧いただきたい。

4. Written Exchangeタスク

 ここで、著者がこれまでに行った学校行事を活用したタスクの中でも、特に生徒の積極的な取り組みが見られた「Written Exchangeタスク」を紹介する。

 Written Exchangeを訳すと「筆問筆答」という意味にもなる通り、このタスクの目的は、修学旅行に関する情報交換をワークシート上で行うことである。具体的には、修学旅行が同じ訪問先という仮定のもと、修学旅行を控えている生徒と前年度に修学旅行を経験した生徒が、英語で質問をしたり、アドバイスをしたりして情報交換を行う。

 このタスクの大きな特徴は、異学年の生徒間で情報交換をさせることである。ワークシート上とはいえ、学年が異なる生徒との交流には、様々な教育的効果が期待できる。このようなタスクは、担当学年が異なる複数の教員で実施するのが1つの方法だが、たとえそれが無理でも、高校では1人の教員が学年を超えて科目を担当することも多いので、1人の教員だけでも実施は十分可能であろう。また、生徒
は中学校で基礎的な英文法の学習を終えているので、異学年間で英語による情報交換タスクに取り組ませることに無理はないと思われる。

 では、Written Exchangeタスクの細かい指導手順について紹介する。このタスクは、これから修学旅行を控えている2年生と、前年度に修学旅行を経験した3年生との間の情報交換、という設定である。なお、ワークシートに記名はさせないが、教師がそれぞれのワークシートに番号を振って管理し、常に2年生と3年生が同じペアで情報交換できるようにしておく。

【Task 1】 3年生から2年生へのアドバイス(3年生の授業内で実施)

①タスクの目的を伝えるとともに、オーラル・インタラクションを通じて、タスク内で使用できそうな語彙やフレーズを共有する。

②修学旅行の経験をふまえたアドバイスを、ワークシートに記入させる。具体的には、旅行先での良い経験と悪い経験、旅行先で行うべきことと行うべきでないこと、旅行先に持参すべきものなどについて英作文を行わせる。

③少人数のグループを作らせ、記入したアドバイスをグループ内で口頭発表させる。また、ほかの生徒の発言で参考になるものがあったら記入させる。

【Task 2】 2年生から3年生への質問(2年生の授業内で実施)

①タスクの目的を伝えるとともに、オーラル・インタラクションを通じて、タスク内で使用できそうな語彙やフレーズを共有する。

②3年生からのアドバイスを読み、それらに対するコメントを英語で記入させる。

③少人数のグループを作らせ、3年生からのアドバイスや自らのコメントを互いに口頭発表させる。また、ほかの生徒の発言で参考になるものがあったら記入させる。

④3年生に対する質問を、個々に英語で記入させる。

【Task 3】 3年生から2年生への回答(3年生の授業内で実施)

①タスクの目的を伝えるとともに、オーラル・インタラクションを通じて、タスク内で使用できそうな語彙やフレーズを共有する。

②2年生からの質問を読み、それらに対する回答を英語で記入させる。

③既に話題となった内容に加えて、修学旅行に向けてのアドバイスがあれば、英語で記入させる。

【Task 4】 2年生から3年生への報告(修学旅行後、2年生の授業内で実施)

①タスクの目的を伝えるとともに、オーラル・インタラクションを通じて、タスク内で使用できそうな語彙やフレーズを共有する。

②旅行先での良い経験と悪い経験について、英作文を行わせる。そのほか、修学旅行で経験したことなどについて、自由に英作文をさせる。

③少人数のグループを作らせ、記入した自らの英文を互いに口頭発表させる。また、ほかの生徒の発言で参考になるものがあったら記入させる。

5. タスク実施時の語彙・文法指導について

図1 教科書本文指導という枠組みから離れて上記のようなタスクを行う際、語彙や文法事項の指導をどのように行うかということは懸案事項であろう。前述のEllis(2003)の定義にもある通り、タスクでは、意味・内容の伝達が第一義であり、明示的な語彙や文法指導といった形式面は第一義ではない。

 しかし、Willis(1996)のモデル(図1)では、タスク実施の上で語彙や文法事項の指導を行うのが望ましい場面があるとされている。1つは、実際のタスク活動(Task Cycle)に入る前のPre-taskの段階である。事前にタスクの遂行に役立つ語彙や文法事項を、オーラル・インタラクションなど通じて自然な形で提示することで、生徒の取り組みを支援することができる。もう1つは、タスク活動(Task Cycle)終了後の段階で、ここでの形式面の指導はLanguage Focusと呼ばれている。教師が英作文を観察する中で発見した、共有すべき語彙や文法事項を提示したり、生徒からそのような語彙・文法事項があったら発表させたりする。また、あらかじめ学習すべき文法事項を定めて、タスクを作成することもでき、Ellis(2003)はそのようなタスクのことをFocused Taskと呼んでいる。例えば著者は、前述のWritten Exchangeタスクのうち、最初の「3年生から2年生へのアドバイス」は、意図的に生徒たちにshould have〈p.p.〉とshouldn’thave〈p.p.〉を使用させた。大学受験を控えて文法学習のニーズが高い3年生には、このようなFocused Taskを実施することも効果的だと思われる。

図2

6. まとめ

 今回は、教科書本文指導という枠組みから離れた形で行う技能統合型活動として、学校行事を活用したタスクを紹介した。ワークシートなどの参考資料を下記に提示するので、ご活用いただきたい。

 本連載の最終回となる次回は、英語を苦手とする生徒を対象とした技能統合型活動について紹介する予定である。

<参考資料> 

Written Exchange Taskのワークシート: 【Word】 【PDF】
英語版企画書: 【Word】 【PDF】
  表で取り上げた「文化祭の企画書を英語で作成する」というタスクで用いるワークシート。

※資料をダウンロードできます。ワードのソフトをお持ちでない場合は、PDFファイルをご利用ください。

参考文献

Ellis, R. (2003). Task-based Language Learning and Teaching. Oxford: Oxford University Press.
Willis, J. (1996). A framework for task-based learning. Harlow, UK: Longman.


小金丸 倫隆  (こがねまる・みちたか) 

photo
神奈川県立厚木清南高等学校定時制 教諭。
テンプル大学大学院修了。神奈川県立大和西高等学校にてSELHi研究に携わった後、現職。平成20年には神奈川県教育委員会より優秀授業実践教員として表彰される。


 (STEP英語情報 2013年1・2月号より)

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